2009年12月26日

「08憲章」反体制派作家に懲役11年判決 「大国」中国、強気の警告

 ■欧米「人権カード」封印影響

 【北京=野口東秀】中国共産党の一党独裁体制の変更を求めた「08憲章」を起草したとして、国家政権転覆扇動罪に問われた著名な反体制派作家、劉暁波氏(53)の判決公判が25日、北京市第一中級人民法院(地裁)で開かれ、劉氏に懲役11年、政治的権利剥奪(はくだつ)2年の実刑判決が言い渡された。劉氏は控訴する方針。

 判決は、劉氏が「08憲章」と6つの論文で一党独裁体制を批判したことがデマや誹謗(ひぼう)などを通じて政権転覆を扇動した罪にあたると認定。その上で「インターネットで文章を発表、その範囲は広範で社会への影響は大きい」などと非難した。

 劉氏は「憲法で言論の自由が保障されている」と無罪を主張してきたが、全面的に退けられた。

 判決後、劉氏の妻、劉霞さん(48)は記者団に「夫は法廷で『私が中国で最後の“言論の囚人”であることを望む』と述べたが、将来も同じことが起きるはずだ」と当局を批判。11年という重い量刑には「意志の強い夫は後悔していない。夫には監獄を家と思って過ごしてもらいたい」と涙を見せた。

 米大使館の人権問題担当者は裁判所前で「(劉氏の)即時釈放を改めて要求する」との声明を出した。

                   ◇

 劉暁波氏(53)に言い渡された厳しい判決は、劉氏が民主化運動の象徴的な存在であるだけに、国内の民主化勢力に対する警告の意味合いが強い。「共産党批判を決して許さない」という指導部の強気の背景には、金融危機からいち早く脱した中国の経済力とそれによる影響力を前に、欧米各国が人権問題に対する批判をゆるめている現実がある。

 「国家政権転覆扇動罪の最高刑は懲役15年だ。夫に対する判決は、『08憲章』のような体制批判を許さないという警告だ」。判決後、妻の劉霞さんは量刑が予想を上回るものだったとの思いを明かした。

 当局は劉氏に「海外出国」を打診していたとされ、この日の判決は「あくまで国内にとどまり、体制批判を続ける」(劉氏)との“信念”に対する回答でもあった。

 劉氏はかつて「一党体制から多党制への変化は徐々に起こる。2010年ごろではないか。一般社会の変化を官が押さえ込むことはできない。経済利益が多元化、価値観も多様化する中で、政治だけが硬直化している現状は長続きしない」と、中国の体制変化を期待を込めて予測していた。

 しかし、劉氏は中国が経済成長を背景に、国際社会での影響力を短期間にここまで強めることまで予測していただろうか。

 それを最初に示したのが今年2月と5月にそれぞれ訪中したクリントン米国務長官、ペロシ米下院議長の姿勢だ。中国の人権問題を熱心に批判してきた両氏は訪中時に人権問題を正面から取り上げることを控え、関係者を失望させた。

 米国は「強大で繁栄する中国の台頭は国際社会に力を与えるだろう」(オバマ米大統領)と高成長を続ける中国と良好な関係を維持することを重視しているからだ。

 中国の人権状況を批判して昨年8月の北京五輪開会式を欠席したカナダのハーパー首相も今月初めの訪中で、中国からの投資を得るため、人権問題をほぼ封印。先日訪中したフランスのフィヨン首相も劉氏の裁判について批判的な発言を控えた。

 こうした各国の姿勢が微妙な影響を与えたことは否めず、対外的にも「西側の政治改革は踏襲しない」(胡錦濤国家主席)とのメッセージを送る結果になった。(野口東秀)
posted by lay at 08:00| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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